
純音聴力検査のやり方が理解できない、マスキングが理解できない。
このような疑問を持つ人に読んでほしい記事です。
わたしは2020年2月に日本聴覚医学会が開催した「聴力測定技術講習会」に参加しました。参加して純音聴力検査について学んだことを紹介していきます。
もともと純音聴力検査のマスキングが全然わからなかったので、わたしのようにマスキングのやり方などを苦手と思っている人はぜひ読んでください。
純音聴力検査について

純音聴力検査ってなにするの?
まずは純音聴力検査の基本を学びましょう。
純音聴力検査とは低い音から高い音を聞かせて、どのくらいの大きさで聞こえるかを検査するものです。
気導と骨導

検査は気導と骨導の2種類を行います。
気導は外から音を聞かせて外耳→中耳→内耳を伝わります。外耳から鼓膜を振動させ、3つの耳小骨に伝わり、そして内耳の蝸牛、蝸牛神経、神経から脳に伝わっていきます。
それに比べて骨導は耳の後ろの骨(側頭骨)に音を振動させて聞かせるので、外耳や中耳を伝わることなく直接蝸牛に伝わります。
蝸牛から脳までの伝わり方は気導と骨導は同じです。
マスキングを理解しよう!

まずマスキングってなに?
聴力検査は気導と骨導を検査します。どちらも片耳ずつ検査していきます。検査したい耳ではない、反対の耳に音が聞こえてしまうときがあります。それを防ぐために反対の耳に雑音(ホワイトノイズ)を聞かせて、音が聞こえないようにすることをマスキングといいます。
マスキングのかけ方(練習問題)
マスキングは言葉だけで説明しても理解しづらい部分があるので、オリジナルの練習問題を使いながら説明していきたいと思います。
練習問題①
気導検査のオージオメータについての問題です。
Rightが検査耳、Leftがマスクする耳(雑音を聞かせる耳)です。どちらの耳もA-Bgapはないです。
では、検査耳の気導を検査するときにマスクする耳にマスキングは必要でしょうか。また、どのくらいの雑音が必要でしょうか。

解答
まずは気導検査の両耳間移行減衰量はどのくらいかを考えていきます。気導検査の両耳間移行減衰量は約50dBです。なので検査耳に50dBを聞かせると反対耳に0dBの音が聞こえてしまいます。

下にある赤と青のランプが付いているということは両耳に音が聞こえているということになります。このようになるときは反対耳はマスキングが必要になります。
マスキングが必要になるので、次はどのくらいのマスキングをかければいいのかが問題になります。
検査耳に50dBの音を聞かせると、両耳間移行減衰量により音は50dB減衰して反対耳に伝わります。反対耳は気導も骨導も0dBで聞こえてしまうので0dBよりも大きな音でマスキングする必要があります。
ぎりぎり聞こえない0dBだと聞こえてしまう人もいるので、+15dBくらいすると確実に聞こえないと思います。

まずはA-Bgap無しの初級編の問題から解説しました。次はレベルアップします!
練習問題②

難易度上がります!!
検査耳と反対耳どちらにもA-Bgapがある場合です。
検査耳の骨導検査をするときに反対耳にはどのくらいのマスキングが必要か考えましょう。マスクする耳にもA-Bgapがあることに気をつけてください。

解説
まずは骨導検査の両耳間移行減衰量を考えます。気導は50dB減衰しますが、骨導検査は約0dB減衰します。ほぼ反対耳に音がそのまま聞こえてしまいます。なので、最低でも検査耳に聞かせる音以上のマスキングが必要になります。
検査耳の骨導は20dBで聞こえるので反対耳に20dBマスキングしてみます。下の画像が検査耳に20dB聞かせて、反対耳を20dBマスキングしたときです。

下のランプを見てみると赤と青ついてしまっています。

これだとマスキングが足りないということになります。
マスキングは外側からノイズを聞かせているので気導検査と同じ仕組みです。なのでA-Bgapがあるとその分音は減衰してしまいます。
マスキングをするときはA-Bgap分多くかける必要があります。

マスキングを40dBかけるとA-Bgap20dB減衰して、20dBのマスキングがされていることになり、検査耳側の音が反対側に聞こえなくなります。
前の問題同様、ぴったり20dBのマスキングだと聞こえる可能性があるので、+10dB多くかけてもいいと思います。
マスキングをするときはオーバーマスキングに気をつけましょう。
まとめ
今回は純音聴力検査のやり方やマスキングのかけ方を解説をさせていただきました。
苦手意識があった人は少し理解できたでしょうか。
教科書の文章を読むだけだと理解しづらいことも多いと思うので、練習問題に挑戦しながら勉強すると楽しくできると思います。
わたしもまだまだ完璧ではないので、一緒にがんばっていきましょう!
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